山口順子のエッセイ『縮を愛する』①

当ブログにて、縮の研究に取り組んでいらっしゃる山口順子先生の
エッセイ連載がスタートします。
『縮を愛する』というテーマを軸に、
縮にまつわるお話をわかりやすく綴っていただくコーナーです。

今週より計8回にわたり、連載をさせていただくことになりました。

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◆プロフィール  山口順子(やまぐちじゅんこ)

1944年大阪府生まれ、京都在住
武庫川女子大学大学院修了
元 神戸松蔭女子大学・短大部 准教授
元 武庫川女子大学・短大部 非常勤講師

麻の研究に取り組むとともに、学生教育の中で小千谷縮を取り入れ、その普及に
力を注いできた小千谷縮愛好家
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『縮との最初の出会い』

4月、これまでの寒さが薄れて汗ばむ陽気の日があると、
“あぁ、小千谷縮の服が着られる”とワクワクする。
私は4月から9月終わりまで、小千谷縮の洋服を愛用する。
こんなに愛用するようになったのは小学生時代の夏休みにまで遡る。
なぜかはっきりと想い出す。
蚊帳の中で寝た風景、小さめの掛布団の気持ちの良かったことを・・・

60年前、真夏でも30℃を越える日は2、3日で、日中は27℃位であった。
夜具の掛布団は縮で出来ていた。
青紫色の桔梗模様の優しいザラザラした肌触りの私のお布団、大好きだった。
はじめは脚の間に挟んで横向きに寝ていたものが、
いつの間にかきっちり首までかけて朝を迎える。
ところで、この生地が布団用のものだったのか着物の再利用だったのかは
今になって知る由もないが、当時、縮であることを母から教えられ、
「上等なお布団なのよ」と聞かされていた。
多くの家では木綿物であったらしい。

この寝心地の良かった愛すべき縮のお布団が、
懐かしさを伴って、今、小千谷縮を愛用する原点のひとつになっている。

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