縮の研究に取り組んでいらっしゃる山口順子先生の
エッセイです。
『縮を愛する』というテーマを軸に、
縮にまつわるお話をわかりやすく綴っていただくコーナーです。(全8回)
『祖父母の家で夏休みを過ごす 』
中学生になって電車で30分、ひとりで大阪市内の祖父母の家に行くようになった。
そこで10日余り滞在、その家でもまた小千谷縮に出会うのであった。
そのあたりは空襲を免れた地域で、
市内といっても大きなお屋敷もある静かなところであった。
梅雨に入る前、建具はふすまから葦戸に入れ替えされ、
8畳と6畳続きの間の4枚戸は中央の2枚が左右に開かれる。
その空間に掛けられていた間仕切り、確か5枚だったか。
着物から作られた祖母自作の丈の長いもの、
流水模様の小千谷縮でできていた。
庭から流れ込む風でゆっくり揺らめいて、
涼しさを感じたのだった。
薄手の麻布ならではの揺らぎであった、と今にして思う。
かつては教員をしていたモダンで美人だった祖母を思い出す度、
小千谷縮の間仕切りが目に浮かぶ。
気高かった部屋のしつらえに、
少女の頃から触れられたことに感謝したい。
これまた私の縮好きのもう一つの影響と思うのである。
◆プロフィール 山口順子(やまぐちじゅんこ)
1944年大阪府生まれ、京都在住
武庫川女子大学大学院修了
元 神戸松蔭女子大学・短大部 准教授
元 武庫川女子大学・短大部 非常勤講師
麻の研究に取り組むとともに、学生教育の中で小千谷縮を取り入れ、その普及に
力を注いできた小千谷縮愛好家
過去のエッセイはこちらからご覧いただきます。
第1回『縮との最初の出会い』