山口順子のエッセイ『縮を愛する』④

縮の研究に取り組んでいらっしゃる山口順子先生の
エッセイです。
『縮を愛する』というテーマで、
縮にまつわるお話をわかりやすく綴っていただくコーナーです。(全8回)

『究極のクールビズ』
子供の頃、着るものはすべて母の手によるものであった。
木綿のものには糊づけをして、ピンとアイロンのあたったものを
着せてもらっていた。
そう、父のワイシャツと同時の仕事であって、
余熱でハンカチのアイロンがけをするが私の仕事であった。
そんな母もさすがに夏は嫌だったのか、
夏の日常着はサッカー、お出かけにはリップルと
アイロン不要のものとなるのであった。

大人になって、旅に出る夏はサッカーの服を縫う。
着替え1枚を携えて、宿に着けば洗って干す。
身軽な旅をした。
サッカーは木綿の細かな凹凸のある生地で、
小千谷縮のいとことしておこう。
ちなみに、小千谷縮は苧(ちょ)麻(ま)の凹凸(しぼ)のある布である。
糊づけやアイロンがけの要らない小千谷縮の布は、
環境問題が問われている今、最も優秀な衣服材料と言って過言ではない。
今や家族の夏服は、ほとんどが縮のものとなっている。
究極のクールビズだ!

 

◆プロフィール  山口順子(やまぐちじゅんこ)

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1944年大阪府生まれ、京都在住
武庫川女子大学大学院修了
元 神戸松蔭女子大学・短大部 准教授
元 武庫川女子大学・短大部 非常勤講師

麻の研究に取り組むとともに、学生教育の中で小千谷縮を取り入れ、その普及に
力を注いできた小千谷縮愛好家

過去のエッセイはこちらからご覧いただきます。
第1回『縮との最初の出会い』
第2回『祖父母の家で夏休みを過ごす 』
第3回『縮のお座布団』

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