山口順子のエッセイ『縮を愛する』③

縮の研究に取り組んでいらっしゃる山口順子先生の
エッセイです。
『縮を愛する』というテーマで、
縮にまつわるお話をわかりやすく綴っていただくコーナーです。(全8回)

 

『縮のお座布団』

お座布団、夏の家用はジャワ更紗、来客用は近江の縮であった。
この縮のお座布団は私が大人になってもまだ使われていた。
家用は薄く、来客用はぶ厚い。
しかし、この厚みが私にはあまり座り心地の良いものではなく、
今もお座布団は苦手で、畳に正座するのが好きである。

終戦前まで、商人の来訪によって新しい座布団を買ったり、
洗いに出したりしていた、と母から聞いている。
大阪は河内木綿の産地なのに、と大学生のころ尋ねたことがある。
「この家では河内木綿のものは使わなかった」と、
母から我が家の生活史の一端を聞かされた。
はぁん、縮は上等なものなんだ。
先に書いた小千谷縮の夏布団、祖母の家の立派だった間仕切り、
そして、お座布団。縮が生活空間を豊かにしてくれることを
幼い時から自然のうちに教えてくれた祖母と母の
「生活即教育」の精神のなさせた賜物なのだ、とつくづく思う。

 

◆プロフィール  山口順子(やまぐちじゅんこ)

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1944年大阪府生まれ、京都在住
武庫川女子大学大学院修了
元 神戸松蔭女子大学・短大部 准教授
元 武庫川女子大学・短大部 非常勤講師

麻の研究に取り組むとともに、学生教育の中で小千谷縮を取り入れ、その普及に
力を注いできた小千谷縮愛好家

過去のエッセイはこちらからご覧いただきます。
第1回『縮との最初の出会い』
第2回『祖父母の家で夏休みを過ごす 』