山口順子のエッセイ『縮を愛する』⑤

縮の研究に取り組んでいらっしゃる山口順子先生の
エッセイです。
『縮を愛する』というテーマで、
縮にまつわるお話をわかりやすく綴っていただくコーナーです。(全8回)

『小千谷縮の着物から服を縫う』

10代の終わりごろ、亡き祖父たちの着物の良いとこ取りをして
ブラウスを縫った。
一つは生成りの地に細かな米粒模様の上布を
用いた襟なし袖なしのブラウス、
もう一つは藍色無地の縮でこちらはフレンチのお袖に。
どちらの着物もかなり着こまれたものらしく、
薄くなったり傷んだところが多くて裁断に苦労したことを思い出す。
でも、とても嬉しくてミシンを踏んだ。
化学繊維万能の時代のなかで、
天然繊維のリフォーム服を着ることに不思議な誇りを
感じる私がいたのである。
また、曽祖父の生成りの麻のスーツが蔵の箪笥から
見つかりスカートを作った。
国会に登院するときに着用したものだという。
これは美しかったのでリフォームも楽に出来たが、
そのスカートを履けば大きなシワが出来た。
シワにならないことが良いものという価値観のなかで、
ちょっと戸惑いがあったなあ。

◆プロフィール  山口順子(やまぐちじゅんこ)

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1944年大阪府生まれ、京都在住
武庫川女子大学大学院修了
元 神戸松蔭女子大学・短大部 准教授
元 武庫川女子大学・短大部 非常勤講師

麻の研究に取り組むとともに、学生教育の中で小千谷縮を取り入れ、その普及に
力を注いできた小千谷縮愛好家

過去のエッセイはこちらからご覧いただきます。
第1回『縮との最初の出会い』
第2回『祖父母の家で夏休みを過ごす 』
第3回『縮のお座布団』
第4回『究極のクールビズ』

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