山口順子のエッセイ『縮を愛する』⑦

縮の研究に取り組んでいらっしゃる山口順子先生の
 エッセイです。
『縮を愛する』というテーマで、
 縮にまつわるお話をわかりやすく綴っていただくコーナーです。
全7回にわたって書いてくださったエッセイも今回、
最終回を迎えました。

『夏には夏の・・・』

昔は良かった。懐古趣味を持ち出すつもりはないが、
良いものは時代を経てもなお良い。
化学製品はその良いものを追いかけて超えることで、
新たに生み出されるものである。
絹に代わるナイロン、羊毛に代わるアクリル、
ゴムに代わるスパンデックス。
そして、ポリエステルは生活を容易にする
第一のものとして君臨する合成繊維である。
しかし、何れの合成繊維も天然繊維に類似こそすれ、
同じ組織構造を持ってはいない。
そして、麻に似た合成繊維はない。
昔が良かったのは、麻の文化が身近なものであったことである。
麻の最良の長所は肌触りの冷涼感にあり、
吸水が速くかつ乾燥も速いことである。
水田社長はこの点を寝具類に着目され、
この文化の事業化に本格的に取り組んでおられる。
兼好法師曰く、家は夏を旨とすべし、と。
高温多湿、特に最近の日本の夏はこの言葉がぴったりだ。
そう、夏には夏の繊維製品を用いよう。
私は小千谷縮のシーツの上に身を横たえて優雅な眠りをいただいている。

◆プロフィール  山口順子(やまぐちじゅんこ)

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1944年大阪府生まれ、京都在住
武庫川女子大学大学院修了
元 神戸松蔭女子大学・短大部 准教授
元 武庫川女子大学・短大部 非常勤講師

麻の研究に取り組むとともに、学生教育の中で小千谷縮を取り入れ、その普及に
力を注いできた小千谷縮愛好家

過去のエッセイはこちらからご覧いただきます。

第1回『縮との最初の出会い』
第2回『祖父母の家で夏休みを過ごす 』
第3回『縮のお座布団』
第4回『究極のクールビズ』
第5回『小千谷縮の服を着物から縫う』
第6回『京都の祇園祭りで』

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