栃木県日光市、日光国立公園内に位置する湿地「小田代ヶ原」。その湿原の中に佇む幻想的な一本のシラカンバの木。この木を指して人は「貴婦人」と呼んでいます。
貴婦人・・・ その言葉の定義はよくわかりませんが、安易なステレオタイプのイメージで述べるならば、シルクのロングドレスに目深に被った羽根付き帽子を身に纏い、その下に隠したるは知性と寛容さ溢れる眼差しと完璧な微笑。花瓶の置かれた丸型テーブルに据えた一脚の椅子にちょこんと腰掛け、風にはためくスカートの裾。必須アイテムは傘、本、そして紅茶・・・
そんな勝手な西洋のイメージは置いておくとして、実際には凛とした佇まいや女性らしい繊細さを指して貴婦人と呼ばれているのだとは思います。人に例えられるということはそれだけこの風景が人間的なエモーションを発しているという証なのでしょうか。確かにじっと眺めていると語り掛けられているような気のする不思議な風景ではあります。風景は語るのだとしたらそれを眺めるという行為は単方向的な理解や解釈でなく、人と自然との双方向的なコミュニケーションといえるのかもしれません。そういう意味ではこの小田代の風景はとても饒舌で雄弁な語り部なのだろうと思います。(超自然的な話ではなく)
本題に入ります。
今回ご紹介する「シルクタペストリー 小田代の四季」はシルク生地の上に前述した小田代の風景を染めで現したタペストリーになります。経糸にベースとなる風景を染め上げ、緯糸には手織りにて太さ、風合いの異なる糸を図柄に合わせて、色と質感とを微妙に調整しながら幾重にも織り込み、透明感と奥行きを表現した職人の魂と気迫を感じるような逸品です。
更に下半分の水面の部分には経糸のみを残す技法にて、風に揺れるさざ波をも再現。織の技法が単なるデザインではなく、きちんと意味や機能のあるものとして生かされているところがポイントになります。そしてシルクは動物繊維、まさに生きた布としてお使い頂けるかと思います。絹の繊細な特徴を極限まで利用し、小田代の風景とマッチさせることで当社のタペストリーの中でも飛び抜けて上品さと高級感溢れるタペストリーに仕上がっております。
タペストリーは絵画のように飾るものとよく言われ、その認識はある程度正しいのですが、やはり布ですからそれ以上の機能や楽しみ方もあるかと思います。立体物として空間を感じられる点だけでも大きく異なりますし、さらに風など吹いてはためけば時間も感じることができるでしょう。もちろん手に触れれば感触もありますので、絵画と比べても楽しみ方の側面が沢山あることは事実だと思います。空間、時間、手触り、その3つが繋がれば一つの素敵な物語が生まれる・・かもしれません。一人で楽しまれても良いのですが、客人の接待の場などに飾れば大いにそのおもてなしの力を(貴婦人並に)発揮してくれるのではないでしょうか。
サイズは75x80cmと使いやすいサイズで、日本の風景ではありますが地域概念を飛び越えたような趣のある製品ですので和洋関係なくお使い頂けるかと思います。色は2種類ご用意しており、通年お使い頂くなら利休を、これから秋に向けての設えを考えるなら茶をお選び頂けばよいかと思います。また同様の手法にて制作された別デザインの「上高地」もございますのでそちらも是非ご検討くださいませ。価格は税抜70,000円となっており、なかなかお手を出しづらい価格帯の製品だとは思いますが、8月16日までは20%OFFのセールを実施しておりますのでこの機会に是非どうぞ。
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※ 8月16日までは夏季休業にて発送をお休みしております
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左と中央ののれんは厚めの段織の生地の上に、日本の伝統色である芥子やすずめ茶を手引き染めで染め上げた、深い色とシンプルなデザインが印象的ないかにも秋然とした雰囲気の麻のれんです。右のものは秋冬向けである絹綿混織の素材を使用した、落ち着きと華やかさを併せ持った高級感溢れるのれんになります。